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《資源育成コース》⑧いつか、その日が来るまで。アカムツ資源を守る挑戦

2026.06.18 更新

みなさん、こんにちは!
資源育成コース3年生です。

資源育成コース航海日誌の連載7本目は、アカムツの種苗生産について紹介します。

みなさんは、「アカムツ」と聞いて、どんな魚を思い浮かべますか?

アカムツは、のどの部分が黒いことから、別名「ノドグロ」とも呼ばれています。白身魚とは思えないほど脂がのっていることから、「白身のトロ」と呼ばれることもある高級魚です。

写真を見ると、のどの部分が本当に黒くなっていることが分かります。この黒い色はお腹の中まで続いています。これは、アカムツが発光する生き物を食べた時に、体の中の光が外に漏れるのを防ぎ、外敵から身を守るためだと考えられています。

日本海側では、深い海に生息するアカムツが漁獲されます。しかし、アカムツの生態にはまだ分かっていないことも多く、安定した資源の確保が課題となっています。

そこで海洋高校では、平成30年度よりアカムツ資源の保全を図ることを目的に、近畿大学と高大連携を行い、アカムツの種苗生産に取り組んできました。種苗生産とは、魚を卵から仔魚、そして稚魚の段階まで人工的に育てることです。

令和元年度には、全国の高校として初めて、アカムツの人工授精と稚魚期までの飼育に成功しました。そして令和6年3月には、新潟県で初めてアカムツの稚魚放流を実施し、アカムツの資源保全に役立てるという大きな目標に近づくことができました。

私たちは、このアカムツ実習を通して、たくさんの経験をし、学び、感じることがありました。

まずは、アカムツの採卵と人工授精について紹介します。

アカムツの産卵期は、9月中旬から下旬ごろです。地元漁業者の方々の協力のもと、日没後の刺し網漁業に同乗し、近畿大学水産研究所の皆さんと一緒に、漁獲された親魚を使って船上で人工授精を行いました。

刺し網漁業とは、海に仕掛けた網に魚を絡ませて獲る漁法です。日没と同時に漁場へ向かい、昼間に設置した網を回収していきます。ゆっくりと網が引き上げられる中で、「早くアカムツが上がってこないかな」と期待が高まりました。

しばらく待っていると、赤い光沢のある魚が上がってきました。

アカムツです。大きさは約30cmほどの成熟した個体でした。しかし、この段階では、まだオスかメスかは分かりません。

成熟したオスの場合、精子が水に触れるとすぐに動き出し、長くても数十秒ほどしか生きられないため、作業には正確さとスピードが求められます。そのため、まずお腹の部分を清潔なタオルでよく拭きます。その後、お腹から肛門付近にかけて、力を入れながらゆっくり押し出していきます。

初めての経験だったため、最初はなかなか卵が出てきませんでした。しかし、お腹の方から絞り出すように押してみると、きれいな黄色の卵が出てきました。

成熟したメスでした。

卵が出てきた瞬間はもちろん、卵の色がとてもきれいだったことにも感動しました。

採卵ができたら、次は人工授精です。アカムツは「乾導法」という方法で人工授精を行います。乾導法とは、乾いた容器に卵を取り、そこへ精子をかけ、その後に海水を入れることで精子を動かし、受精させる方法です。

近畿大学水産研究所で成熟したオスから採った精子を、採卵した卵にかけてよく混ぜます。その後、22〜23℃ほどの海水を容器に入れて、さらに混ぜます。

アカムツの卵は、受精すると海水に浮く「分離浮性卵」という性質を持っています。そのため、少し時間を置いてから、水面近くに浮かんだ受精卵をすくい取ります。そして、その受精卵を実習棟のパンライト水槽に移しました。

この日の乗船は17時半ごろから始まり、下船したのは22時ごろでした。長い時間がかかる作業で大変でしたが、資源育成コースだからこそできる、とても貴重な経験になりました。

次に、中間育成について紹介します。

中間育成とは、放流した時に生き残る力が高まる大きさになるまで、人の管理のもとで一定期間育てることです。外敵から逃げたり、環境の変化に耐えたりできる大きさまで育てることで、放流後の生存率を高めることにつながります。

アカムツは、受精してから約25時間でふ化します。そのため、乗船した次の日から、すぐに飼育管理が始まります。

平日、休日に関係なく、水温、酸素飽和度、溶存酸素量などを毎日記録していきます。アカムツは、口が開く「開口」のあと、ヒラメと同じようにシオミズツボワムシという動物プランクトンを餌として与えます。その後、ワムシより大きなアルテミアを与え、最終的には配合飼料という人工的な餌に切り替えていきます。

ワムシを与えている時期は、生きている個体が多く見られます。しかし、アルテミアや配合飼料を与え始める時期になると、死んでしまう個体も出てきます。ある程度成長した個体が死んでいく傾向もあり、その原因はまだ分かっていません。

餌を与えると、水槽の中には汚れがたまります。そのため、サイフォンの原理を利用した自作の掃除機で、水槽の底にたまった汚れを吸い取ります。吸い取った汚れの中には、死んでしまったアカムツの個体が含まれることもあります。

その時には、命を扱っていることを強く実感し、心が痛くなりました。

それでも、元気に生き残り、卵から稚魚にまで育った個体を見ると、「よくここまで生きてくれた」と胸がいっぱいになります。小さな命を育てることの難しさと、その命が育っていく喜びの両方を感じました。

そして、放流です。

放流は、今年の3月と4月に行いました。今回放流した個体は、近畿大学水産研究所富山実験場で種苗生産されたアカムツ稚魚で、本校実習棟まで移送されました。その後、漁業者の方々の協力のもと、約1500尾を洋上に放流しました。

まず、アカムツの稚魚を、実習棟の近くに停めた水槽付きのトラックへバケツリレーで移動させました。みんなで声を掛け合いながら、一匹一匹をできるだけやさしく扱うように意識しました。

次に、トラックを能生漁港まで移動させ、船上の角形水槽へアカムツを移しました。そして船を沖まで走らせ、洋上に放流しました。

放流した直後、鳥に食べられてしまった個体もいましたが、ほとんどのアカムツは元気に海底へ潜っていきました。その様子を見ながら、「このアカムツたちが将来成熟して、また種苗生産に力を貸してほしい」「地元の海に戻ってきてほしい」と思いました。

採卵、人工授精、中間育成、そして放流までの流れを通して、本当にたくさんのことを経験しました。

アカムツはとても繊細な魚で、大きく育つ個体はほんのわずかです。毎日の管理の中で、死んでしまう個体を見るたびに悲しくなることもありました。しかし同時に、命を育てることの大変さや、新しい発見、そしてアカムツの生態への興味が強く残りました。

ここまで取り組むことができたのは、周りの方々の力があったからです。コースの先生方、漁業者の方々、近畿大学水産研究所の皆さん、クラスの仲間、そしてアカムツに関わったすべての方に感謝しています。

このような経験ができたことは、本当に貴重なことだと感じています。

将来、私たちが放流したアカムツが成長し、地元のスーパーやお寿司屋さん、レストランなどに並ぶ日が来るかもしれません。

「新潟県・日本海の星」として、アカムツが地元を支える日が来ることを願っています。

次回の記事も楽しみにしていてください!

新潟県立海洋高等学校 航海日誌 運営元:新潟県立海洋高等学校

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